Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.638 caratteri · 233 schermate
「わかりました。では、そこにおいでのお方は、むかし雨露次と隠れ名していた服部治郎左衛門どのと、卯木さまでございましょうがな」
夫婦は胸の堰を切ったように、にじり出て。
「おおようお忘れなく。……私は治郎左衛門元成、これにいるのは妻の卯木でございまする」
「やれ、おなつかしや」
と、覚一は、離れ過ぎている上座から、もどかしげに。
「世になみならぬ騒ぎにつけ、また、少しでも戦が休むにつけ、どうなされておられるやらと、おふたりのことは忘れた日もございませぬ。さ、さ、どうぞこちらへ寄って下さい」
ほかの座頭や別当や勾当たちは、そう聞くと、客の四人を急に内へ請じて、覚一のすぐまえに席をあけた。
「お、どこに。……お手は」
と、覚一の両の手は、片方に元成の手、片方に卯木の手をさぐりあてて、握りしめると。
「ああ、おすこやかよ。あれはもう二十数年も前の春の暮でしたな。けれどあの折、お別れした時の通りなお手の温みが、思い出と共にあふれてくる。ただここに母がいないのだけが淋しい」
「ほんに……」と、卯木はすぐ涙して。「私たち夫婦には生涯の門出となった一夜でした」
「それは私も同じこと。