Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

Leggi 蓼喰う虫 (たでくうむし) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 110.066 caratteri · 216 schermate

Aozora Bunko

そう云ってお久は老人の前へ三味線を置いた。

「要さんは『ゆき』の文句の意味がよく分るかね」

と、何気ない体で三味線を取って調子を低く直しながら、内々老人は得意の色をつつむことが出来ないのである。東京時代に一中節の素養があるせいか、地唄のけいこはほんの近年のことだけれども、わりに巧者に弾きもすれば、唄いもして、しろうとが聞けば、とにかく一種の味わいがあった。そして当人もそれを少からず自慢にしていて、いっぱしの師匠のように叱言を云うのが、なおさらお久は助からなかった。

「さあ、いったい昔の唄の文句と云うものは、ぼんやり心持は分るような気がしますけれど、文法的に云ったらば殆ど出鱈目じゃあないんですかな」

「そうだよ、全く。………昔の人は文法なんかは考えない。ぼんやり心持が分る、―――その程度で沢山なんだね。そのぼんやりとしているところに却って余韻があるんだね。たとえばこんな文句がある、―――」

と、老人はすぐ唄い出しながら、「………『今は野沢の一つ水、澄まぬ心の主にもしばし、すむは由縁の月の影、忍びてうつす窓の内』………それからあとが『広い世界に住みながら』となるんだが、これは男が女の許へ忍んで来るところなんだ。