Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

Leggi 蓼喰う虫 (たでくうむし) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 110.066 caratteri · 216 schermate

Aozora Bunko

「さあ、それがどうなるか分らないんです」

「そう云わんとまあお這入りやす。おいしい物おへんよって、せいぜいお腹減しといとおくれやす」

要はここの風呂へ這入るのは久し振りだった。上方に普通な長州風呂と云う奴で、一人の体が満足には漬からないくらい小さな釜の、周りの鉄の焼けて来るのが東京風のゆっくりとした木製の湯槽に馴れた者には肌ざわりが気味悪く、なんだか「風呂へ這入った」と云う心持がしないのに、まして湯殿がおそろしく陰気な建て方で、高いところに無双窓があるだけだから昼間でも厭にうすぐらい。自分の家でタイル張りの浴室にばかり這入りつけているせいか穴蔵へでも入れられたようで、その上丁子を煎じてあるのが、垢だらけに濁った薬湯のような連想を起させるのである。美佐子なぞは、あのお湯は丁子の匂いで胡麻化してあるので幾日目に換えるのだか分らないと云って、すすめられると体よく逃げたものであったが、主の方は又「うちの丁子風呂」と云うのを自慢にして、客への御馳走と心得ているらしかった。老人の「雪隠哲学」に依ると、「湯殿や雪隠を真っ白にするのは西洋人の馬鹿な考だ、誰も見ていない場所だからと云って自分で自分の排泄物が眼につくような設備をするのは無神経も甚しい、すべて体から流れ出る汚物は、何処までも慎しみ深く闇に隠してしまうのが礼儀である