Classici giapponesi con furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Leggi 蓼喰う虫 (たでくうむし) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 110.066 caratteri · 216 schermate
と訴えているらしいのが分ると、それが何がなしに癇に触れてならなかった。
「廊下を一と廻り運動して来たらどうかね」
と、老人が云った。
「廊下に何か面白いものでもあって?」
半分皮肉に云いかけてから、彼女は冗談に紛らしながら、
「あたしも大阪の芸術には降参しちゃったわ。たった一と幕だけでお父さん以上に降参したわ」
「ふふ」
と、お久が鼻の奥で笑った。
「どうなさる? あなた、―――」
「さあ、僕は孰方でもいいんだが、………」
要の方は要の方で、例のあいまいな返辞をしながら、今日に限ってそうしつッこく「帰る帰らない」を問題にする妻の態度に、淡い不満を蔽い隠すことが出来なかった。自分も彼女が長居をしたくないことは知っている、云われないでも潮時を見て器用に切り上げるつもりだけれども、折角呼ばれて来ているものを、せめて父親の手前だけは機嫌よくして、夫の処置に任せてくれたら、―――それくらいは夫婦らしく、気を揃えてくれたらいいのに。
「今からだと、ちょうど時間の都合もいいし、―――」
彼女は夫の顔色には頓着なく、七宝入りの両蓋の時計をキラリと胸のところで開いた。
「来たついでだから、松竹へ行って御覧にならない?」