Classici giapponesi con furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate
それさ、あっしがいやなのは。……だがまあ、それほどいうんなら起してきまさ」
男は板裏を鳴らしながら、酒場の奥の狭い階段を、バタリ、バタリと、のろくさくのぼっていった。やがて足音は五人の真上へくる。
男はそっと扉を叩いている。階下では五人が、音のする方へ耳をすます。男はこんどはやや強く叩きながら、どなっている。
「大将……大将……もう正午すぎですぜ」
みな返事をまっている。……が、返事がない。
割れるように扉をたたく音が、酒場じゅうをゆすぶる。
「大将……大将、工合でも悪いんですか」
返事がない……
男がころがるように階段を駆けおりてきた。酒鼻がボーイを抱きとめる。
「返事をしない……(顔をしかめながら、うわずったような声で、)ああ、こいつあ妙だ。……こんなことははじめてなんで……どうしたってんだろう……あっしゃ、もう」
酒鼻がいった。
「よし! 一緒に行ってやろう。……とにかく見てみなくては……」
そこで、硬ばった顔をしながら、二人が階段をのぼってゆく。絲満の部屋の前へくると、酒鼻は鍵口からなかをのぞいた。
「……雨戸がしまってるんだ。……真っ暗でなにも見えやしない」