Classici giapponesi con furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate
西貝は、これさ、これさと芝居がかりに手をふりながら、乾に、
「大きな声はよしたまえ。……みなきいてるじゃないか」
乾は、久我を睨みすえて、もう一度、
「畜生!」と叫ぶと、急に、崩れるように椅子の中へ落ちこみ、両手で顔を蔽って、啜り泣きはじめた。しゃくりあげて泣くのだった。
西貝は、手がつけられない、という風に、頭を掻きながら、
「ちぇっ、泣き出しちゃいかんなあ。……(卓ごしに手をのばして、乾の肩を叩きながら)乾老……。これさ、乾老。君の酒もあまりよくないねえ。……泣くほどのことあ、ありゃしない、冗談じゃないか。……(そして、久我のほうへ片眼をつぶって見せた)久我氏、貴殿もすこし慎しまっせえ。老人にからかうなんざ、よくないよ」
久我は、てれくさそうに笑いながら、乾に、
「かんべんしてください。冗談なんですから」
乾は、ようやく顔をあげると、涙で濡れた眼で、うらめしそうに久我を見ながら、
「いけないよ。冗談にしても、あんなことをいうのは。……とうとうあたしを、泣かせてしまって……」
そして、掌で眼を拭った。もう泣いていなかった。
久我が、いった。
「つい、なんでもなく言ったんですが……。