Classici giapponesi con furigana
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おさん
おさん
山本 周五郎
Leggi おさん di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.128 caratteri · 66 schermate
「親きょうだいのないのも嘘か」
「兄が一人いるわ、調布というところでお百姓をしているの」
「そこへ帰るんだな」
「あたし嫁にやられた家からとびだしたのよ、そんな土地へのこのこ帰れると思って、――まっぴらだわ、そんなこと死んでもごめん蒙るわ」
参太は口をつぐんだ。宿の者が起きたのだろう、表をあける音がし、勝手と思われるあたりで、人の声が聞え始めた。
「大磯で泊ったときのこと、覚えてる」とおふさが囁いた、「あたしが、こんなこと初めてよ、って云ったこと、あんたを怒らせたのが悲しくなって、廊下へ泣きに出ていったこと、――恥ずかしい、ばかだわあたし、こんなこと決して云うまいときめていたのに、どうしたんでしょ、ああ恥ずかしい」そして参太の背中へ顔を押しつけながら云った、「お願いだから聞かなかったことにして、ね、いまのこと忘れちゃってちょうだい、お願いよ」
参太がやわらかに云った、「覚えていろの忘れちまえだの、おまえはむずかしいことばかり云うぜ」
「あんたのせえよ」夜具の中から云うため、おふさの声は鼻にこもったように聞えた、「あんたに会うまではこんなことはなかったわ、本当に、こんなだらしのないところを見せたことはなかったのよ」