Classici giapponesi con furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Leggi かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 91.006 caratteri · 182 schermate
「おい、どうしたんだッ、前の馬車は」
競馬の日は、人々の気が立っていた。
「やい、わきへ寄せろ」
「ぼろ馬車」
「轢き殺すぞ」と、後ろの方でごうごうと喧しい。
かかりあいになった馭者は、甚だしく狼狽していたが、お光さんはあたりが殺気立つほど冷然として、
「君はわたしを強請だと言ったわネ、強請であるかないか、また、わたしのからだに怪我があったかないか、念のために、裸にして調べてくださいよ! え! 調べてもらいたいわ。――君、わたしを裸にして公衆の立会をうけて調べて頂戴、そのかわりに……」
翡翠の雫の滴っている耳朶を桃いろにして、睨めつけるのだった。
「もし、わたしの玉のような体に、少しでも怪我があったらきかないよ。わたしもハンケチ女の紫組のお光さんだからね」
こう言われて尻尾を巻かない馭者があればもぐりである。果たして、彼女をさんざ罵倒した馭者は蒼くなって謝罪した。けれどお光さんはきかなかった。
「いやよ! さ、裸にして調べて頂戴、君も男じゃないこと」
すると、群衆の中に交じって、それとなく弥次っていた愚連隊の中から、神学生の今村がつかつかとそこへ出て来て、鹿爪らしく仲裁した。