Classici giapponesi con furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Leggi かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 91.006 caratteri · 182 schermate
「松どん、松どん」と帳場の下からコークスにかかっている鍋を気にして、
「焦げくさいよ。それから、庄吉は警察の後註文を持って行ったかい。七つだよ、ああ、留置場の方はみんな行ってるとさ」
「おばさん、その留置場へ、ゆうべ、かんかん虫のトムがはいって来ない?」
「トム? 知らないね。だれか知ってるかえ、伊勢佐木署へそんな男が抛りこまれていたかいないか」
「お光さん、トム公ってな、子供でしょう。まだこんな小ッこい」と煮方の松どんが、煮を待ちながら背丈の寸法を示して、
「そいつなら、ゆうべも今朝も、さんざん刑事部屋でなぐられていたッて、庄吉が話してましたぜ」
「じゃ、たしかに、捕まって来たのだね」
「なあに、今朝はもう、西戸部の少年懲治監の方へ廻されましたよ。子供は二晩以上は留置場に置かねえことになっていますから」
「おや旦那。……いらっしゃいまし」
ふいに、内儀さんが座蒲団を向けたので、お光さんはうしろを振り向いてみた。そしてすぐに、自分の肩に寄って、ぬうっと立っている男に刑事らしいにおいを感じた。刑事の眸は眼の皮の左の隅に寄って、見ぬふりをしながらお光さんの耳たぶをじっと見ていた。