Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かんかんむしはうたう

かんかん虫は唄う

吉川 英治

Leggi かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 91.006 caratteri · 182 schermate

Aozora Bunko

「喧嘩したの?」

「ううん」

トム公は、彼女たちを見廻して、

「たれか、五十銭一つ貸してくれ」

「五十銭?」

「貸してくれ」

「ないわ」

「たれか、あるだろう」

「二十銭なら」

「わたし、五銭ならある」

トム公のてのひらに、白銅が二つ、小さな銀貨が三ツばかり集まった。

「これから、南京街?」

「それどこじゃねエよ。人の家へ持って行くンだ」

「違うわね、いつもの、プリンスと」

「癪にさわった、おら、癪にさわった。もう船渠へは仕事に行ってやらねえ。警察と喧嘩してやる。――それから」

「まア、大した威勢だわよ」

「だから、好きサ」

トムは、肩をゆすぶって、女たちの手を振り落しながら、

「今夜は、ふざけッこなしさ。おれは怒ってるんだ。――弁天通りの高瀬って、何屋だい」

「高瀬なら石炭屋だわ」

「石炭かつぎかあ」

「違うわよ、百万長者だっていうじゃないの」

「もとは、おれッちと、おんなじだ」

「そうそう、それがどうしたの」

「火を放けてやる!」

「え」

「ウソだよ」

トム公は、いきなり、足もとの砂利をつかんだ。左の手から一つずつ取っては、川面へ向って低く飛ばし始めた。

暗い水面に、燕の腹がするように、小さな飛沫がピョイピョイと切れてゆく。