Classici giapponesi con furigana
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
Leggi かんかん虫は唄う (かんかんむしはうたう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 91.006 caratteri · 182 schermate
空弾だと思うならば、撃ってみましょうか、見本にネ」
彼女は、事もなげに、菩提樹のこずえに向って、一発、実弾を放した。
「まだ、五発あるわ」
今の短銃の音に、墓場のあいだに、チイハの夢占をむさぼっていた人間たちは、びっくりして飛び起きた。そしてコソコソと逃げてゆく跫音を、黒眼鏡も、お光さんも、愚連隊たちも、黙って、聞き過ごしていた。
お光さんは、重ねて、
「名まえは? 君の」
「高橋」
と、遂に、黒眼鏡もふるえながら言いだした。
「高橋? それから」
「高橋八寿雄」
「住居は」
「東京」
「うそ。……ほんとのことを仰っしゃいな」
「東京だから東京だって言うのに、信じなければしかたがない」
「うそ、うそ。柳田商会の伝票へ書いてあったのは、長者町八丁目、盛心館としてあったじゃないの」
「それは下宿先だ」
「ご職業は」
「木綿問屋ということも、きのう柳田の店で話していたはずだ。知っているならば、くどく聞き給うな」
「お生憎様。君は、まずその黒眼鏡を外してはどう? そんなもので、世間がごま化されていたら滑稽だわ。ね、トム公」
トム公は、さっきから、彼女の侍者のようにまた、今にもつかみかかりそうに、鋭い眼をしていたが、黙って、うなずいた。