Classici giapponesi con furigana
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さまようまちのさまよういえのさまようひとびと
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
国枝 史郎
Leggi さまよう町のさまよう家のさまよう人々 (さまようまちのさまよういえのさまようひとびと) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.916 caratteri · 75 schermate
十二
「誘惑されてと申しますと?」
「誘惑には二通あるようですな。……意識的の誘惑と無意識の誘惑と」
「…………」
「で、二人のお嬢さんの場合は、後者にあたると思われるのです」
「無意識的の誘惑だと、こう仰有るのでございますね」
十二
「そうです」
と私は云いました。
「そうです、無意識誘惑なのです。云い換えると不可抗的誘惑なのです。……ところで現在初枝さんが、それにかかっているのです」
「まあ」
と夫人は顔色を変えました。
「どうしたらよろしゅうございましょう。……それに無意識、不可抗的って、どんな誘惑なのでございましょう?」
「精神科学、心理学、そんなものに属しているものです。が、私にはその誘惑も、大概破壊することが出来そうですから、ご心配せずにお任かせ下さい」
「どうぞお願いいたします」
「召使も大勢でございましょうね。お屋敷が大分手広いようですから」
「はい、女中が三人に、支那ボーイが一人、爺やが一人、五人の召使を使って居ります」
それから私は尚一時間ほど、夫人を相手に話してから、柵家へ別れを告げました。
私の住居は日本人町の呉淞路の二十号にあって、日本商人の山崎という人の、別館一棟を借りていたので――それは洋館でありました――誰にも累いされることなしに、研究することが出来るのでした。