Classici giapponesi con furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.043 caratteri · 56 schermate
口が少し大きすぎる。その大きすぎる口をあいてよく笑う。とりわけそういうとき、剛子は単純で快活に見える。
ところで、沼間夫人は、剛子が大口をあいて笑うのをあまり好いていない。
「笑うのは下等よ。もっとも、あなたのは特別だけど。……口をしめなさい奥歯が風邪をひく」
剛子は、奥歯が風邪をひかぬように、あわてて掌で口をおさえる。
剛子は退役陸軍少将石井長六閣下の末娘で、今年十九になる。しかし、笑ったり跳ねたりしているときは、十七ぐらいにしか見えない。
剛子とは妙な名前だが、これは剛情の剛ではない。質実剛健の剛である。長六閣下は、これからの女性は男のいいなりになるようなヘナヘナではいかん。竹のようにしなやかで、かつ、剛健な意志をもたねばならぬという意見で、それで剛子と名づけた。剛子は父の望みを嘱されているのである。
剛子が自分の名をいうと、相手は、かならず聞き違えて、
「ああ、露子さんですか」
という。すると、剛子は、
「つゆではありません、剛よ」
と、丁寧に訂正する。父の希望のこもった大切な名を間違われるのはいやだからだ。つゆ子なんて名は、なにか病み細って、蒼い顔をしてうつむいている女の姿を連想させる。