Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
発田のぶち犬のことは思いつかなかったので、彼は白木の小娘が持って行ったにちがいないと、漠然と疑いをかけていた。白木の娘は手癖がわるいというのが、もっぱらの近所の噂であったから。
それから三四日して、夕食にシチウが出た。そのどろどろのシチウを膳の上に見たとき、彼は神田マーケット裏の泥水溜りをすぐ聯想して、いきなり嘔吐がこみ上げてくるのを感じた。意識下に眠っていた嫌悪のかたまりが、いきなり現実のシチウに刺戟されて直結したような感じであった。彼は顔をしかめて、台所をたのんでいる婆やに言った。
「これは食えない。下げてくれ」
そして彼は御飯に熱い茶をかけて、やっと一杯たべた。御飯は消しゴムのような厭な味がした。それから念のために体温を計ってみると、検温器は六度八分を指していた。平熱が常人よりもずっと低い彼にしては、正常な体熱ではなかった。平常の彼の体熱は、三十五度を越えることはなかったから、肉体のなかで、なにか異常がおこっているのは確かであった。
(三元のことで、中山はおれにまるで腹を立てているような具合だったな)
あの水溜りに落っこちたのは、酔いに足をとられたのではなくて、中山が突き落したのかも知れないと、彼はふと考えたりした。