Classici giapponesi con furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Leggi 五瓣の椿 (ごべんのつばき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.721 caratteri · 296 schermate
「忘れろ、そいつを忘れちまえ」と彼は自分に舌打ちをした、「そんな気持でおみのがくどきおとせるか、ほかのことは考えるな、自分の一生が変る瀬戸際だぞ」
酒がなくなったので手を叩いた。廊下の向うで返辞が聞え、足音が近づいて来、障子があいた。得石ははいって来た娘を見て、あっという眼つきをした。
「おみのさん」と云って彼は坐り直した。
おみのと呼ばれた娘は、得石に向かってしたたるように笑いかけ、黙って、ゆったりと歩み寄って来ると、得石のうしろへまわり、両の袂を彼の肩へ掛けて、背中からそっと抱きしめた。
「あたしを待っていて下さらなかったの」とおみのはあまえた囁き声で云った、「――にくらしい先生」
そして得石の左の耳たぶを噛んだ。得石は身を捻って、おみのを抱きこもうとしたが、おみのは喉で笑いながら巧みにその手を除け、火鉢の脇へいってきちんと坐った。
「待たなかったわけじゃあない」と彼は盃を取っておみのに差した、「待ちあぐねて一と口やり始めたところだ、まあ一つ、と云っても酒はなしか」
「いま来るようよ」と云っておみのは片手を出した、「いいえお盃ではないの、このあいだ約束した物を見せてちょうだい」