Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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じゅうにしこう

十二支考(上)〔全2冊〕

南方 熊楠

Leggi 十二支考(上)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) di 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 290.735 caratteri · 566 schermate

Aozora Bunko

ただしかかる現象を実地について研究するに、細心の上に細心なる用意を要するは言うまでもないが、人の心を以て畜生の心を測るの易からぬは、荘子と恵子が馬を観ての問答にもいえる通りで、正しく判断し中てるはすこぶる難い。たとえば一九〇二年に出たクロポートキン公の『互助論』に、脚を失いて行き能わぬ蟹を他の蟹が扶け伴れ去ったとあるを、那智山中読んで一月経ぬ内に、自室の前の小流が春雨で水増し矢のごとく走る。流れのこっちの縁に生えた山葵の芽を一疋の姫蟹が摘み持ち、注意して流れの底を渡りあっちの岸へ上り終えたところを、例の礫を飛ばして強く中てたので半死となり遁れ得ず、爾時岩間より他の姫蟹一疋出で来り、件の負傷蟹を両手で挟み運び行く。この蟹走らず歩行遅緩なれば、予ク公の言の虚実を試すはこれに限ると思い、抜き足で近より見れば、負傷蟹と腹を対え近づけ両手でその左右の脇を抱き、親切らしく擁え上げて、徐ろ歩む友愛の様子にアッと感じ入り、人を以て蟹に及かざるべけんやと、独り合点これを久しゅうせし内、かの親切な蟹の歩み余りに遅く、時々立ち留まりもするを訝り熟視すると何の事だ、半死の蟹の傷口に自分の口を接て、啖いながら巣へ運ぶのであった。