Classici giapponesi con furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Leggi 南国太平記 (なんごくたいへいき) di 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 493.291 caratteri · 991 schermate
八郎太は、返事をしないで、益満の顔を眺めていた。
「極秘、未だ同志にも語りませぬが、久光様の御側小姓を一人、引入れて――」
二人は、じっと眼を合せた。八郎太にとって、益満の底知れぬ、そして、大胆な計が、少し薄気味悪かったし、益満は、一本気なこの老人に、ここまで話していいか、悪いか――八郎太の様子をうかがった。
「まあ、雨がひどくなったのに、小太郎は」
七瀬が、独り言のようにいった。
雛人形を、膝の上で、髪を撫でたり、襟をいじったりしていた深雪が、七瀬の声に、周章てて
「お迎えに行って参じましょうか」
人形を、箱の中へ入れて、じっと、眺めていた。益満が
「四国町の、湯屋横町に、常磐津の師匠がいる。そこからこの町、心当りを聞けば、判るであろう」
「はい」
深雪は、人形に、小さい声で
「これで、お別れ致します。他所の可愛いお嬢さんに、たんと可愛がってもらいなされ。さよなら」
両手を、人形箱の前へついて、御叩頭した。薄い涙が眼瞼に浮いていた。
「行って参じます。お母様、妾の戻らぬうちに道具屋を呼んでおいて下さいませ」
襖越しに、こう云って
「ああ」
と、七瀬の気のない返事を聞くと、もう一度、人形を取り出して、頼ずりをした。