Classici giapponesi con furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Leggi 南国太平記 (なんごくたいへいき) di 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 493.291 caratteri · 991 schermate
(品川で泊った方がよかった)
と、思った。街道には一人の通行人も無かったし、これから川崎までは、殆んど人家の無い道であった。川崎は、未だ深い眠りの中にいるうちに通った。そして、鶴見へ入る手前で、ようよう雲に鈍い薄あかりがさし初めて、雨が上るらしく、降りも少くなって来たし、雲の脚が早く走り出した。
合羽を着ていたが、それを透したと見えて、着物の所々が、冷たく肌へ感じるくらいに濡れていた。そして、暁の冷たい空気が顫えるくらいに寒かった。
鶴見を越えると、道傍の、茶店などは起き出ていて、煙が低く這っていたし、いろいろの朝らしい物音が聞えかけてきた。神奈川へ入る手前では、早立ちの旅人が、空を仰ぎながら、二三人急いで来た。そして
「お早う、道中を、気をつけさっし」
と、気軽に三人へ挨拶して、擦れちがって行った。綱手は
(こんな人ばかりの道中ならよいのに)
と、思った。そのうちに断れ断れの雲間から、薄日がさし出した。三人は、神奈川の茶店で、朝食を食べて、着物を乾すことにした。鰊、蒟蒻、味噌汁、焼豆腐で、一人前十八文ずつであった。
この辺から、左右に、小山が連なって、戸塚の焼餅坂を登りきると、右手に富士山が、ちらちら見えるまでに、晴れ上ってしまった。