Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Leggi 南国太平記 (なんごくたいへいき) di 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 493.291 caratteri · 991 schermate

Aozora Bunko

牧は、その凝視めているところに現出している、見えぬ敵と争っているのであった。飛びかかるように身体を突き出すかと思うと、打挫かれたように、胸を、臂を引いて、その度に歯を剥き出した。

「否、否っ」

大声で、次の間まで響く声で、叱咤すると、いきなり立った。そして、戒刀を振上げると、すぐ、崩れるように坐った。肩で呼吸をして、全身を顫わして

「邪中の正気、見られいっ」

と、叫ぶと、火炉の中へ、堕ちかからんばかりに身体を延して、戒刀を突き出した。そして、顔を横に振りながら

「否、否、垂迹和光の月明らかに――」

と、絶叫して、戒刀で上を指した。

「終末に及んで、分段同居の闇を照らす、これ、邪中の正」

こう叫ぶと、身体を引いて

「十方充満の諸天、赦させ給え」

そう叫んだ刹那、牧は

「南無、明王」

人間の声とも思えぬ絶叫であった。部屋の中へ、爆弾の如く炸裂したかと思うと、左手に握っていた忿怒明王の画像を、火炉の中へ抛げつけた。

画像は、炎々と燃え上っている段木の焔の上へ、落ちかかると、一煽り煽られた。そして、焔の上へ何者かの手で立たせられたように、さっと、突っ立った。火焔の明りに、照らし出された明王は、牧を睨んでいるようでもあるし、牧の祈願を聞き入れたようでもあった。