Classici giapponesi con furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Leggi 南国太平記 (なんごくたいへいき) di 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 493.291 caratteri · 991 schermate
久光は、頭を上げて、夜具の端を、掴んだ。そうして
「兄上」
と、曇った声で叫んだ。
「お心は、そ、そのお心、久光――よく、お察し申しております」
斉彬は、頷いた。微かに、その眼に涙が浮んでいた。
「判ってくれるか」
「わ、判っております、お察し申します」
斉彬は、顫える手を、夜具の中で延して、久光の手を握った。久光は、熱のある人の手を掴むと、涙で、顔が上げられなくなってきた。
「哲丸は――」
と、斉彬が、呟くと共に、久光は、脣を噛んで、俯向いた。
「哲丸を――頼む」
「は、はい」
「将曹達はおるか」
「はっ」
「何事も、島津のため、天下のためとおもえ。軽輩を慈しめ。忠義をよく守立て、久光をよく輔佐せい」
将曹は、膝の上へ、涙を落していた。斉彬の最後の時として、人間の最後の時として、当然、一言でも、陰謀に対する憤りが、怨みが、せめて、皮肉な言葉であろうと――己の陰謀の成就を喜びながらも、人の死に面して、異常な仁慈の心の主君の死に対して、平静な、厳粛な心に立返っていた将曹は、そうした一つの、皮肉さえなしに、自分に対して、後事を頼み、感謝の言葉を述べた斉彬に、腹の底からの畏敬と、後悔とを感じていた。