Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate

Aozora Bunko

網棚の片隅に置いた骨壺が、絶えず彼の意識から離れなかった。荒涼とした夜汽車の旅だったが、混濁と疲労の底から、何か一すじ清冽なものが働きかけてくるような気持もした。

その清冽なものは、彼がそれから二日後、骨壺を抱えて郷里の墓地の前に立ったときも、附纏ってくるようだった。納骨のために墓の石も取除かれたが、彼の持っている骨壺は大きすぎて、その墓の奥に納まらなかった。骨は改めて、別の小さな壺に移されることになった。改めて彼は再び妻の骨を箸で撰りわけた。火葬場で見た時とちがって、今は明るい光線の下に細々とした骨が眼に泌みるようだった。壺に納まった骨は静かに墓の底に据えられ、余りの骨は穴のなかにばら撒かれた。この時、彼の後に立っている僧がゆるやかな優しい声で読経をあげた。それは誰かを静かにゆさぶり、慰め、あやしているような調子だった。彼は眼をあげて、高いところを見ようとした。眼の少し前には、ひょろひょろの樹木が一本、その後には寺の外にある二階建の屋根が、それらはすべてありふれた手ごたえのない眺めだった。が、陽の光ばかりは遙かに清冽なものを湛えていた。

埋葬に列なった人々は、それから兄の家に引かえして座敷に集った。