Classici giapponesi con furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate
三菱へ学徒動員で通勤している二人の中学生の甥も、妙に黙り込んで陰鬱な顔つきであった。
……ある日、嫂の高子がその家から姿を晦ました。すると順一のひとり忙しげな外出が始り、家の切廻しは、近所に棲んでいる寡婦の妹に任せられた。この康子は夜遅くまで二階の正三の部屋にやって来ては、のべつまくなしに、いろんなことを喋った。嫂の失踪はこんどが初めてではなく、もう二回も康子が家の留守をあずかっていることを正三は知った。この三十すぎの小姑の口から描写される家の空気は、いろんな臆測と歪曲に満ちていたが、それだけに正三の頭脳に熱っぽくこびりつくものがあった。
……暗幕を張った奥座敷に、飛きり贅沢な緞子の炬燵蒲団が、スタンドの光に射られて紅く燃えている、――その側に、気の抜けたような順一の姿が見かけられることがあった。その光景は正三に何かやりきれないものをつたえた。だが、翌朝になると順一は作業服を着込んで、せっせと疎開の荷造を始めている。その顔は一図に傲岸な殺気を含んでいた。……それから時々、市外電話がかかって来ると、長兄は忙しげに出掛けて行く。高須には誰か調停者がいるらしかった――、が、それ以上のことは正三にはわからなかった。