Classici giapponesi con furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate
射落したのであった。「広島は防げるでしょうね」と電車のなかの一市民が将校に対って話しかけると、将校は黙々と肯くのであった。……「あ、面白かった。あんな空中戦たら滅多に見られないのに」と康子は正三に云った。正三は畳のない座敷で、ジイドの『一粒の麦もし死なずば』を読み耽けっているのであった。アフリカの灼熱のなかに展開される、青春と自我の、妖しげな図が、いつまでも彼の頭にこびりついていた。
清二はこの街全体が助かるとも考えなかったが、川端に臨んだ自分の家は焼けないで欲しいといつも祈っていた。三次町に疎開した二人の子供が無事でこの家に戻って来て、みんなでまた河遊びができる日を夢みるのであった。だが、そういう日が何時やってくるのか、つきつめて考えれば茫としてわからないのだった。
「小さい子供だけでも、どこかへ疎開させたら……」康子は夜毎の逃亡以来、頻りに気を揉むようになっていた。「早く何とかして下さい」と妻の光子もその頃になると疎開を口にするのであったが、「おまえ行ってきめて来い」と、清二は頗る不機嫌であった。女房、子供を疎開させて、この自分は――順一のように何もかもうまく行くではなし――この家でどうして暮してゆけるのか、まるで見当がつかなかった。