Classici giapponesi con furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate
彼女はまだあの時の悪夢から覚めきらないもののように、こまごまとあの瞬間のことを回想しては、プルプルと身顫をするのであった。あの少し前、彼女は土蔵へ行って荷物を整理しようかと思っていたのだが、もし土蔵に這入っていたら、恐らく助からなかっただろう。私も偶然に助かったのだが、私が遭難した処と垣一重隔てて隣家の二階にいた青年は即死しているのであった。――今も彼女は近所の子供で家屋の下敷になっていた姿をまざまざと思い浮べて戦くのであった。それは妹の子供と同級の子供で、前には集団疎開に加わって田舎に行っていたのだが、そこの生活にどうしても馴染めないので両親の許へ引取られていた。いつも妹はその子供が路上で遊んでいるのを見ると、自分の息子も暫くでいいから呼戻したいと思うのであった。火の手が見えだした時、妹はその子供が材木の下敷になり、首を持上げながら、「おばさん、助けて」と哀願するのを見た。しかし、あの際彼女の力ではどうすることも出来なかったのだ。
こういう話ならいくつも転っていた。長兄もあの時、家屋の下敷から身を匐い出して立上ると、道路を隔てて向うの家の婆さんが下敷になっている顔を認めた。