Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate

Aozora Bunko

自分のために生きるな、死んだ人たちの嘆きのためにだけ生きよ。僕を生かしておいてくれるのはお前たちの嘆きだ。僕を歩かせてゆくのも死んだ人たちの嘆きだ。お前たちは星だった。お前たちは花だった。久しい久しい昔から僕が知っているものだった。僕は歩いた。僕の足は僕を支えた。僕の眼の奥に涙が溜るとき、僕は人間の眼がこちらを見るのを感じる。

人間の眼。あのとき、細い細い糸のように細い眼が僕を見た。まっ黒にまっ黒にふくれ上った顔に眼は絹糸のように細かった。河原にずらりと並んでいる異形の重傷者の眼が、傷ついていない人間を不思議そうに振りむいて眺めた。不思議そうに、何もかも不思議そうな、ふらふらの、揺れかえる、揺れかえった後の、また揺れかえりの、おそろしいものに視入っている眼だ。水のなかに浸って死んでいる子供の眼はガラス玉のようにパッと水のなかで見ひらいていた。両手も両足もパッと水のなかに拡げて、大きな頭の大きな顔の悲しげな子供だった。まるでそこに捨てられた死の標本のように子供は河淵に横わっていた。それから死の標本はいたるところに現れて来た。

人間の死体。あれはほんとうに人間の死骸だったのだろうか。