Classici giapponesi con furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate
では、あの人たちも、もう還ってゆくところを失った人間なのかしら、ああ、では、やっぱし地球は裂けて割れてしまったのだ。ふと気がつくと、わたしの水溜りのすぐ真下に階段が見えて来た。ずっと下に降りて行けるらしい階段を、わたしはふらふら歩いて行った。仄暗い廊下のようなところに突然、目がくらむような隙間があった。その隙間から薄荷の香りのような微風が吹いてわたしの頬にあたった。見ると、向うには真青な空と赤い煉瓦の塀があった。夾竹桃の花が咲いている。あの塀に添ってわたしは昔わたしの愛人と歩いていたのだ。では、あの学校の建ものはまだ残っていたのかしら。……そんな筈はなかった、あそこらもあの時ちゃんと焼けてしまったのだから。わたしのそばでギザギザと鋏のような声がした。その声でわたしはびっくりして、またふらふら歩いて行った。また隙間が見えて来た。わたしの生れた家の庭さきの井戸が、山吹の花が明るい昼の光に揺れて。……そんな筈はなかった、あそこはすっかり焼けてしまったのだから。またギザギザの鋏の声でわたしはびっくりしていた。また隙間が見えて来る。仄暗い廊下のようなところははてしなくつづいた。