Classici giapponesi con furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate
……僕はあれを悪夢にたとえていたが、時間がたつに随って、僕が実際みる夢の方は何だかひどく気の抜けたもののようになっていた。たとえば夢ではあのときの街の屋根がゆるいゆるい速度で傾いて崩れてゆくのだ。空には青い青い茫とした光線がある。この妖しげな夢の風景には恐怖などと云うより、もっともっとどうにもならぬ郷愁が喰らいついてしまっているようなのだ。それから、あの日あの河原にずらりと並んでいた物凄い重傷者の裸体群像にしたところで、まるで小さな洞窟のなかにぎっしり詰め込められている不思議と可憐な粘土細工か何かのように夢のなかでは現れてくる。無気味な粘土細工は蝋人形のように色彩まである。そして、時々、無感動に蠢めいている。あれはもう脅迫などではなさそうだ。もっともっとどうにもならぬ無限の距離から、こちら側へ静かにゆるやかに匐い寄ってくる憂愁に似ている。それから、あの焼け失せてしまった家の夢にしたところで、僕の夢のなかでは僕の坐っていた畳のところとか、僕の腰かけていた窓側とかいうものはちょっとも現れて来ず、雨に濡れた庭石の一つとか、縁側の曲り角の朽ちそうになっていた柱とか、もっともっとどうにもならぬ佗しげなものばかりが、ふわふわと地霊のようにしのび寄ってくる。