Classici giapponesi con furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate
みとれているうちに泣きたくなるほど烈しいものを感じだした。あのなかにこそ、あのなかにこそ、とわたしはあのなかに飛込んでしまいたかった。だが、わたしは雨やどりのため、時計店のなかに這入って行った。ガラスの筒のなかに奇妙な置時計があった。時計の上にくっついている小さな鳥の玩具が一秒毎に向を変えて動いている。わたしはその鳥をぼんやり眺めていると、ふと、望みにやぶれた青年のことがおもいうかんだ。人の世の望みに破れて、こうして、くるくると動く小鳥の玩具をひとりぼんやり眺めている青年のことが……。だが、わたしはどうしてそんなことを考えているのか。わたしも望みに破れた人間らしい。わたしには息子はない、妻もない。わたしは白髪の老教師なのだが。もしわたしに息子があるとすれば、それは沙漠に生き残っている一匹の蜥蜴らしい。わたしはその息子のために、あの置時計を購ってやりたかった。息子がそいつをパタンと地上に叩きつける姿が見たかったのだ。
………………………
声はつぎつぎに僕に話しかける。雑沓のなかから、群衆のなかから、頭のなかから、僕のなかから。どの声もどの声も僕のまわりを歩きまわる。