Classici giapponesi con furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate
その上、その種はある神秘な力があって、彼の固疾にはなくてはならない良薬なのだし、それを今持運んでいるということが、かぎりない慰を与えてくれるとともに、何ともいえない不安な気持をそそる。狭い暗い桟橋を渡ったかと思うと更に心細げな路が横わり、つづいてまた水の見える場所に来ている。そうして、暫くすると、彼はまたはてしない汽船の旅をつづけているのであった。
――夏の頃、彼は窓の下にへちまの種を蒔いて、痩土に生長して行く植物の姿を、つくづくと、まるで憑かれたように眺めていた。繊い蔓の尖端が宙に浮んで、何かまきつくものをさがしている、そのかぼそいもののいとなみは見ているものの心をうっとりとさせるのであったが、どうかするとかすかな苦悩をともなって来るのでもあった。この二三年彼の顔の皮膚をほしいままに荒らしている湿疹も、微妙なるものの営みではあった。それは殆ど癒えかけてはいたが、ちょっとした気温の変動でも直ぐに応じて来た。たとえば、雨の近い夕方、息をしているのも不思議なような一刻、微かに皮膚の下側を匐い廻るもののけはいがあって、それをじっと怺えていると、今にも神経は張裂けそうになるのであった。