Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate

Aozora Bunko

彼はとても人間の言葉では名指すことの出来ぬ情熱的な色合をしきりに想い浮べていた。すると目の前に、鱶の餌食と化するはかない人間の姿と、チェーホフの心の色合が海底のように見えて来るのだった。そして、三年前彼がはじめて「グーセフ」を読んだ時から残されている骨を刺すような冷やかなものと疼くような熱さがまた身裡に甦って来るのでもあった。奇妙なことに、それを読んだ三年前の季節の部屋の容子とその頃の心のありさままでこまごまと彼には回想されるのであったが、それは殆ど現在の彼と異っていないようでもあった。その頃、彼は一度東京へ出て知人を訪ねようと思っていた。がたったそれだけのことが彼にとってはなかなか決行できなかった。電車で行けば一時間あまりのところにある地点が彼には無限のかなたにあるもののように想像されたし、もしかするとその都会は一夜のうちに消滅しているかもしれないと、妄想は更に飛躍して行った。もの音の杜絶した夜半、泥海と茫漠たる野づらの涯しなくつづくそこの土地の妖しい空気をすぐ外に感じながら、ひとりでそんなことを考えていると、都会の兇悪な相貌がぐるぐると胸裡を駆けめぐりそれは一瞬たりとも彼のようなものの拠りつけそうにない場所に変っていた。