Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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てんしゅかくのおと

天主閣の音

国枝 史郎

Leggi 天主閣の音 (てんしゅかくのおと) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 38.941 caratteri · 79 schermate

Aozora Bunko

九

「どこへ築いたら可いと思う?」

「成程、こいつあ尤だ。そいつから考えるのが順当だ。……壁に耳あり、喋舌っちゃァ不可ねえ。こいつァひとつ掌でも書きやしょう」

「おお夫れがいい。では俺も」

二人は掌へサラサラと書いた。

「よいか」

「ようがす」

「それ是だ」

パッと掌を見せ合った。

さながら符節を合わせたように、二人の掌には同じ文字が、五個鮮かに記されていた。

居附づくり

というのであった。

九

爾来香具師は名古屋城内へ、自由に出入り出来ることになった。

人を避けて二人だけで――即ち宗春と香具師とだけで、密談する日が多くなった。そうして度々宗春は、香具師と連れ立って城外へ出た。二人は彼方此方歩き廻わった。何うやら、地勢でも調べるらしい。

時々酒宴を催した。いつも其席へ侍るのは、他ならぬ愛妾お半の方であった。

何んの理由とも解らなかったが、不安の気が城内へ漂った。家来達は心配した。併し誰一人諫めなかった。それは諫めても無駄だからであった。活達豪放の宗春には、家老といえども歯が立たなかった。宗春以上の人物は、家来の中には居なかった。米の生る木を知らぬというのが、大方の殿様の相場であった。