Classici giapponesi con furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Leggi 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 104.139 caratteri · 208 schermate
斯う言った蔭口が、左馬之助の耳にも聞えないではありませんが、左馬之助はその美しい顔を曇らせる様子もなく、恬然として恙ない日を送って居りました。
その間にも、大奥の噂が、何処の隙間からともなく伝わって来ます。
「そう言っては悪いが、あのお金という女は、どうしても殿様の思召に従わないそうだ」
「ヘエ罰の当った話だね」
「それにしても百日あまり強情を張り通すのはエライよ」
こんな噂が風の如く去来するのを聴いた時だけは、左馬之助の眉も、さすがに動くように見えましたが、それもやがて冷たい静かさに返るのでした。
七月に入ってある日、これも恒例の涼み船が三艘、主君の北見之守をはじめ、藩中重立った者と女達を載せて、夕景に向島から漕ぎ出し、両国橋の下へもやって、暫らく涼を納れました。
月の美しい晩、四方に絃歌の湧く中に、三艘の涼み船は、舷を連ね、本田北見之守は、真ん中の船に納まって、左右にお雪、お金、その他夥しい妻妾を引き付け、此の世を我が世と思う風情に大盃をあげます。
「金、盃を取らせる」
「…………」
お金は動こうともしません。
「近こう」
「…………」
北見之守の額にはサッと癇癖が走って、満面の得意に、暗い影がさします。