Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Leggi 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.902 caratteri · 22 schermate

Aozora Bunko

プロローグ

一

プロローグ

奇談クラブの席上、その晩の話し手天野久左衛門は、こんな調子で始めました。

「これは実に今日の常識や道徳から見れば不可思議極まる事件だが、芸術至上主義に対する、一つの反逆でもあると思います。筋にはなんの誇張もなく、全く切れば血の出るような本当の話ですが、この話の中から、興味以上のものを汲みとって下されば、私の満足はこの上もありません」

そういい乍ら、天野久左衛門は、五本の指を櫛にして、乱れかかる前額の髪を掻き上げます。名前は昔の武者修業のように古風ですが、本人は七つ下りの茶色の背広に、ボヘミアン襟飾をした、芸術家らしい青年です。

美しい会長吉井明子夫人外三十人余りの会員は、真珠色の光りの中に、静まり返って、その幻怪不可思議な話を待ちました。

一

徳川の末期、歌川派の豊国が一世の人気を集めてから、この自由と魅力の芸術――浮世絵の勃興は眼を驚かしました。

美人画の五渡亭国貞、風景画の一立斎広重、武者絵の一勇斎国芳と名人上手簇出の勢に駆られて、天保年間の流行は、苛も絵心あるものは、猫も杓子も、いや国主大名から、質屋の亭主、紺屋の職人までも、浮世絵を描いて、その巧緻精妙な技巧の末を競ったのです。