Classici giapponesi con furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Leggi 家 (いえ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 141.411 caratteri · 285 schermate
こうして、思出の多い家を出て、お雪は夫より一足先に娘達の墳墓の地を離れた。
町中にある家へ、彼女が子供や下婢と一緒に着いた時は、お延が皆なを待受けていた。そこは、往時女髪結で直樹の家へ出入して、直樹の母親の髪を結ったという老婆が見つけてくれた家であった。その老婆の娘で、直樹の父親の着物なぞを畳んだことのある人が、今では最早十五六に成る娘から「母親さん」と言われる程の時代である。極く近く住むところから、その人達が土瓶や湯沸を提げて見舞に来てくれた。お雪は手拭を冠ったり脱ったりした。
静かな郊外に住慣れたお雪の耳には、種々な物売の声が賑かに聞えて来た。勇ましい鰯売の呼声、豆腐屋の喇叭、歯入屋の鼓、その他郊外で聞かれなかったようなものが、家の前を通る。表を往ったり来たりする他の主婦で、彼女のように束髪にした女は、殆んど無いと言っても可い。この都会の流行に後れまいとする人々の髪の形が、先ず彼女を驚かした。
実の家からは、例の箪笥や膳箱などを送り届けて来た。いずれも東京へ出て来てからの実の生活の名残だ。大事に保存された古い器物ばかりだ。お雪はそれを受取って、自分の家の飾りとするのも気の毒に思った。