Classici giapponesi con furigana
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ぎゅうじん
山月記・李陵 他九篇
Leggi 山月記・李陵 他九篇 (ぎゅうじん) di Nakajima Atsushi (中島 敦) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 41.608 caratteri · 84 schermate
何故か、深い溜息がホーッと腹の底から出た。途端に呪縛が解けたのである。
一瞬前の己の状態を考えて、私は覚えず苦笑した。縁から腰を上げて立上ると、その苦笑を浮かべた顔で、家の中の女にサヨナラと日本語で言った。女は何も答えない。酷い侮辱を受けでもしたように、明らかに怒った顔付をして、先刻と同じ姿勢のまま私を見据えた。私はそれに背中を向けて、入口の夾竹桃の方へ歩き出した。
アミアカとマンゴーの巨樹の下を敷石伝いに私はようやく宿に帰って来た。身体も神経もすっかり疲れ果てて。私の宿というのは、この村の村長たる島民の家だ。
私の食事の世話をしてくれる日本語の巧い島民女マダレイに、先刻の家の女のことを聞いて見た。(もちろん、私の経験をみんな話した訳ではない。)マダレイは、黒い顔に真白な歯を見せて笑いながら、「ああ、あのベッピンサン」と言った。そして、付加えて言うことに、「あの人、男の人、好き。内地の男の人なら誰でも好き。」
先刻の自分の醜態を思出して、私はまた苦笑した。
湿った空気のそよとも動かぬ部屋の中で、板の間の呉蓙の上に疲れた身体をぐったりと横たえ、私は昼寝の眠りに入った。