Classici giapponesi con furigana
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やまうらきよまろ
山浦清麿
吉川 英治
Leggi 山浦清麿 (やまうらきよまろ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 45.573 caratteri · 91 schermate
三
『いつも、兄が本鎚に坐り、私が、対う鎚を把って、夜の白むのも知らず、鍛ち明かしたもので御座いました。……けれど、他家へ養子に参ってからは兄に会うのも、年に一度か二度。鎚の音さえ、此の頃はとんと、耳から忘れた気がいたしまする』
出前らしい容子に気づいて、環は、急に長座を詫び、携えて来た土産物の山繭織一反と、山芋の苞とを、奥へ渡して、
『又、伺いまする』
と、辞しかけた。
主の柘植嘉兵衛は、袋巻の白鞘を提げて、一緒に立ち上りながら、
『帰るのか。――ではその辺まで、同道しよう』
と、一緒に門の外へ出た。
三
家毎の杏の花から、淡い朝霧が立ちのぼっている。
川中島の洲を繞る疎林や、丘の草にも、仄かな緑が萠え出して、信濃の春は、雪解を流す千曲川の早瀬のように、いっさんに訪れて来た。
兄の鍛った刀を持って、嘉兵衛が家を出て来たので、山浦環は、
『きょうは、どちらへお越しでござりますか』――と、其刀が気に懸かるように、訊ねた。
『知らぬのか』
と、嘉兵衛は、長国寺の境内に今朝ある「試刀」の催しを話して、
『誰が云い出したか、お抱え鍛冶の荘司箕兵衛直胤の鍛つ刀は、折れ易いといううわさが専ら立ったものじゃ。