Classici giapponesi con furigana
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あくにんのむすめ
悪人の娘
野村 胡堂
Leggi 悪人の娘 (あくにんのむすめ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.405 caratteri · 27 schermate
「……折角で御座いますが……そればかりは申上げられません、そればかりは……」
恐ろしい饒舌に似ず、急に田螺のように黙りこんでしまいます。この上聴いたところで、もう大した収穫もありそうにも思われません。
いい加減にして切り上げると、足はもう厩橋の方に向いて居ります。昨夜の今日で、何んか変った事にあり付けるかも知れないと思う予感が、鳴海の胸をワクワクさせます。
厩橋の橋詰には、昨夜の乞食がもうウロウロして居ります、この辺をお貰いの縄張りにして居るのでしょう。暫らく電柱の蔭や、店の日覆の下などに隠れて、様子を見て居ると、鳴海の気のせいか、何んとなくソワソワして、往来の人に恵を乞う様子などは少しもありません。
尤も、百円札を惜し気もなく投げ出す程の乞食ですから、一銭二銭の合力を乞う方が反って不思議かも知れません。財布も気も軽い鳴海は、フトそんな事を考えて、苦笑を漏らしました。
暫らく経つと乞食は、店先の時計でも見比べて居るのでしょう、門並その辺の商家を覗いて居りましたが、何に驚いたか、急に松葉杖を鳴らして、本所の方へ、橋の上を急ぎます。
鳴海は見え隠れに、その後をつけたことは申すまでもありません。