Classici giapponesi con furigana
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ゆびわ
指環
田中 貢太郎
Leggi 指環 (ゆびわ) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4002 caratteri · 9 schermate
謙蔵はうす鬼魅悪く思わないでもないが、生死の判らない病人の許へ帰って往くのに、汽車賃以外に一銭の小使のないのを心苦しく思っている処であったから、その心は黄金の指環に惹きつけられた。
「じゃ、山路の前へ、ただ落したら好いのですか」
と、云って彼は女の差しだした指環を受けとった。
「それで宜しゅうございます、ただ落してくだされば」
「僕には意味が判らないが、落すくらいの事なら何んでもないのです」
「で、何人にも仰しゃらずに、人に知らすと駄目になりますから」
「何人にも知らしません」
「それから、どうぞ、ここから差して往って、どんなことがあっても、途中で抜かないように、抜くと駄目になりますから」
「それは大丈夫です」
「では、お願いいたします」
「承知しました」
雨の音はもうしなかった。謙蔵はぼうとしていた気が引締ったようになった。彼は指環を左の指にさした。
「もう夜が明けたのですね、雨もやんだようだ、じゃ、失敬しましょう」
「まだお早いでしょう」
女は蒼い顔をしていた。謙蔵は女が冷たくなったように思った。彼は早く下宿へ帰りたかった。
「荷物がありますから」
「そうですか、では、何分宜しく」