Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ゆびわ

指環

田中 貢太郎

Leggi 指環 (ゆびわ) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4002 caratteri · 9 schermate

Aozora Bunko

「承知しました、それじゃ失敬します」

謙蔵は女に挨拶して傍にあった新聞包の下駄を持って起った。女もすうと起って後から送って来たが、謙蔵が玄関を降りてもう一度挨拶しようとして背後を見た時には、もういなかった。そして、気が注いてみると玄関は真暗で今まであった電燈の光はなかった。彼は消燈の時刻にしてはすこし早いと思い思い雨戸を開けた。はたして戸外はまだ真暗で、処どころ雨雲の切れた空に、暁の星が物凄く光っていた。

街路には晩春の午後の陽が明るく射して、町はひっそりとしていた。そこここの塀越しに枝を張っている嫩葉にも風がなかった。今、着いたばかりの謙蔵は、黒い袱衣包を小脇に抱えて××町の方へ曲って来たが、彼は奇怪な指環を酒造屋の前で落そうとして、左の指にさした指環を気にしいしい歩いていた。

四辻になった左側のむかう角が、昔から見馴れている酒造家の山路であった。謙蔵は四辻を歩きながら店頭へ注意した。店の横手に二人の店男が大きな桶に徳利を浸して、それをせっせと洗っていた。店頭には暖簾がだらりと垂れて人の姿はなかった。指環を落すにはまたとない機会であった。彼は急いでその前に往って、そっと指環を抜いて顔をむこうに向けたなり落した。