Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 185.353 caratteri · 371 schermate

Aozora Bunko

「お別れとは」

「明日、洲股へ発足する」

「え……洲股へ」

絶望に近いものが寧子の胸を墨のように濁した。

「――が、心配すな。むしろそなたを歓ばそうと思うてちょっと帰宅したのだ。近いうちにな」

と、藤吉郎は、右の掌のひらを出して、寧子へ示した。

「この掌に、一城が乗るであろうよ。わしもとうとう一城の主になれる。元より小城だが、城は城」

「…………」

寧子は、解せない顔だった。それを藤吉郎は笑って、

「解せまい、まだこの世にない城だからな。これからわしが行って、自分で築く城だからな。はははは」

坐ったかと思うと、湯一つ飲んで、もう彼は立っている。

「留守たのむぞ。中村の母者人へ、何ぞの便りを怠るな。舅姑御たちへよしなに。……よいか、それから」

召使はいないかと、藤吉郎は見まわした。そして、自分と共に立ちかける寧子の顔を――その頬を――両の手で抑えて、

「そなたも、風邪ひくな」

「…………」

かつて、女々しい涙など見せたことのない寧子が、頬を良人の手に抱かれたまま、ぽろりと、涙をこぼした。

余りに良人が快活なのは、むしろ妻に不安を抱かせまいとする心やりであろう。洲股へ出陣して生きて還った将士は稀れである。