Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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なかじきり

日本の文学 2 森鴎外(一)

森 鴎外

Leggi 日本の文学 2 森鴎外(一) (なかじきり) di Mori Ōgai (森 鴎外) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.092 caratteri · 45 schermate

Aozora Bunko

ただ覚ゆ、糸声の波はこのデウベン城をただよわせて、人もわれも浮きつ沈みつ流れゆくを。曲まさにたけなわになりて、この楽器のうちにひそみしさまざまの絃の鬼、ひとりびとりにきわみなき怨みを訴えおわりて、いまや諸声たてて泣きとよむようなるとき、いぶかしや、城外に笛の音起りて、たどたどしゅうも姫が「ピヤノ」にあわせんとす。

弾じほれたるイイダ姫は、しばらく心づかでありしが、かの笛の音ふと耳に入りぬと覚しくにわかにしらべを乱りて、楽器の筐も砕くるようなる音をせさせ、座をたちたるおもては、常より蒼かりき。姫たち顔見合せて、「また欠唇のおこなる業しけるよ」とささやくほどに、外なる笛の音絶えぬ。

主人の伯は小部屋より出でて、「ものくるおしきイイダが当座の曲は、いつものことにて珍らしからねど、君はさこそ驚きたまいけめ」とわれに会釈しぬ。

絶えしものの音わが耳にはなお聞えて、うつつごころならず部屋へかえりしが、こよい見聞きしことに心奪われていもねられず。床をならべしメエルハイムを見れば、これもまださめたり。問わまほしきことはさはなれど、さすがに憚るところなきにあらねば、「さきの怪しき笛の音は誰がいだししか知りてやおわする」