Classici giapponesi con furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Leggi 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 196.831 caratteri · 396 schermate
二人はそのまま無言で蝶のゆくえを見つめていると、蝶は寒い風に圧されるためか、余り高くは飛ばなかった。むしろ地面を掠めるように低く舞いながら、往来のまん中から左へ左へ迷って行って左側の或る寺の垣に近寄った。それは杉の低い生垣で、往来からも墓場はよく見えるばかりか、野良犬などが毎日くぐり込むので、生垣の根のあたりは疎らになっていた。蝶はその生垣の隙間から流れ込んで、墓場の暗い方へ影をかくした。
それを不思議そうに見送っていると、二人のうしろから草履の音がきこえて、五十ばかりの男が提灯をさげて来た。彼は通り過ぎようとして見返った。
「御組屋敷のお嬢さん達じゃあございませんか」
声をかけられて、二人も見かえると、男は音羽の市川屋という水引屋の職人であった。ここらは江戸城に勤めている音羽という奥女中の拝領地で、音羽の地名はそれから起こったのであると云う。その関係から昔は江戸城の大奥で用いる紙や元結や水引のたぐいは、この音羽の町でもっぱら作られたと云い伝えられ、明治以後までここらには紙屋や水引屋が多かった。この男もその水引屋の職人で、源蔵という男である。多年近所に住んでいるので、お北もお勝も子供のときから彼を識っていた。