Classici giapponesi con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate
道は狭くなり、密林が突然切れた。崖である。黒い岩肌が十米ほども垂直に立ち、道は崖の上縁を危く縫っていた。彼等は崖の縁を歩き出した。反射で瞳の色も染まりそうな明るい盆地の展望があった。密林は崖の下から再び始まり、斜面を下るにしたがってまばらになり、それが尽きるところから田が展がっていた。籾の山が何か玩具じみて点々と遠く視野を連っていた。片手で木の根や枝をつかみ僅かに身体を支えて歩き悩みながら、先刻何気なく呟いた言葉の意味が執拗に胸にからむのを彼は感じ始めていた。アパリに居た頃の彼の僚友の大半は既に亡い。ツゲガラオ南方のオリオン峠で米軍をむかえ撃つため、二箇大隊は選ばれて先発した。しかし時は既におそかったのである。オリオン峠は既に米軍に占拠されていて、二箇大隊は猛烈な攻撃を受け大隊長以下ほとんど全滅、わずか二十数名の兵がサンホセに還って来たのみである。オリオン峠の戦闘の選に洩れたことについて、彼は自分をひそかに祝福する気持がないとは言えなかった。また一日早くサンホセに入ったばかりに猛烈な砲撃を受けずに済んだことについて、また本部将校であるばかりに斬込隊に一度も参加せずに済んでいることについて、死んだ僚友の不運をあわれむ心のうらに、彼は或る冷たい喜びを用意していなかったとは言えないのだ。