Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 148.519 caratteri · 296 schermate
「私はおまえの良人だ」
「本当にですか」
「こんどだけではない、このまえのときも、そのまえのときもだ」と甲斐が云った。
律は蒼くなった。そして、なにか云おうとしたが、唇がふるえただけで、言葉は出なかった。
「お駕籠がまいりました」と襖の向うでおくみの云うのが聞えた。すると律は「待たせておおき」と答え、良人に向かって云った。
「それはどういうことですの、こんどとかこのまえとか、そのまえのときとかって」律の声は怒りのためにふるえた、「仰しゃって下さい、いったいそれはどういうことなんですの」
「船岡へ帰ってから話そう」
「いいえいまうかがいます」
「時間がないんだ」
甲斐はゆこうとした。律はその前へまわり、両手で良人の腕をつかんだ。
「あなたの考えていることを仰しゃって下さい、今夜も戻っていらっしゃらないことはわかっています、わたくしをこのまま船岡へ帰らせるなんてあんまりですわ」
「私はこんな性分なんだ」
「そうよ、あなたはそういうかただわ」と律はふるえながら云った、「あなたは冷淡で、無情で、残酷なかたよ、十五年の余も夫婦でいて、ただのいちども本心をおみせになったことがない。