Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 148.519 caratteri · 296 schermate
虎之助はよく眠っていた。宇乃は襖や障子のあけたてに注意しながら、高廊下のほうへ出ていった。曇っているのと、時刻が早いのとで、あたりはまだうす暗く、かなり強く風が吹いていた。
刺すような冷たい風に、衿をかき合わせながら、宇乃はちらと庭の向うを見た。高廊下へ出ると、必ずそうするのが癖になったようである。樅ノ木は静かに立っていた。そこは風が当らないのだろうか、かなり強く吹いているのに、甲斐の樅は枝を張ったまま、しんと、少しも揺れずに立っていた。
「宇乃さん、こちらです」と呼ぶ声がした。
庭へおりる踏段のところに、宮本新八がこっちを見ていた。身なりが変っているだけでなく、どこか顔ちがいがしたようで、すぐには彼だということがわからなかった。宇乃は静かに近よっていった。
「しばらくでございました」と宇乃が云った。
宇乃はそう云って会釈しながら、なつかしそうに新八を見た。新八の顔は蒼ざめて硬ばり、寒さのためだろう、色をなくしたような、乾いた唇がふるえていた。
「原田さまからと仰しゃったのは、あなたでしたの」
「そうです」と新八は唇を舐めた、「もちろん、私です」
「わたくしまた、あなたは仙台へいらしったものとばかり思っていましたわ」