Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 148.519 caratteri · 296 schermate
「なんとか仰しゃって」と律が云った、「ねえ、わたくしどうしても出て来ずにはいられなかったんですのよ、一年だってがまんするのは辛いのに、こんどは一年半にもなるわ、それでもいつお帰りになるか、ということがわかればいいけれど、それもまるでわからないし」
「暑い、そっちへ坐らないか」
「怒っていらっしゃるんですもの」
「帰れなかったわけは知っている筈だ」
「知っていました、けれどもそれはよそから聞いたので、あなたはなにも知らせては下さいませんでしたわ」
「知らせてなんになる」と甲斐は云った、「ここにいる私にだってどうすることもできない、知らせれば母上やおまえに気をもませるだけではないか」
「噂で聞くほうが、もっと心配だとはお思いになりませんの」
「そのために出て来たのか」と甲斐が云った。
律は黙って、ふと躯をかたくした。背中にぴったり接している妻の躯が、かたく硬ばったのが甲斐にわかった。
律は良人からはなれた。
「わたくし汗をながしてまいりますわ」
「うん」と云って、甲斐は振返った。
律はさりげなく、眼をそむけながら立ったが、その額が白くなっているのを甲斐は認めた。
――またか。