Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いんじゅうトリステサ

橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇

橘 外男

Leggi 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) di 橘 外男 (たちばなそとお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 154.788 caratteri · 299 schermate

Aozora Bunko

たが、そうした姿勢のまま私は行員たちももう疾くに退けて、人気のないガランとした階下の営業所の大時計がボウンボウンと侘しげに五時を打つのも聞いた。六時の鳴るのをも耳にした。七時の打つのも聞いた。八時の鳴るのも数えていた。駘蕩たる春の夕もようやくに暮れ、窓から見上げる真っ暗な大空には無数の星が燦々と輝いていた。そしてその星空の下に、バルセローナ全市の灯光は華やかに映えて、電飾やネオンがあちらこちらの高層建築や繁華街と覚しきあたりを彩っていた。市街には今春の宵の歓楽がそろそろと始まってきた頃であったろう。その頃まで電気を点けることも忘れ珈琲の一杯、麪包の一片を取ることすらも忘れ、閉め切った部屋の蒸し暑さも忘れて、私は凝乎と机に凭れていた。すでにさっきから五、六時間もこうしていたのであろう。しかも夜の冷気も感じなければ喉も乾かず腹も空かず、ただ躍り上るような軽やかさ……真っ白な妻の肌に銃弾を打ち込み、狡智に長けたベナビデスの面眼蒐けて拳銃を発射する時の喜びばかりが擽るように、胸に込み上げていたのであった。夜間の巡視が始まったのであろう。その頃になって忍びやかな靴音がコトリ、コトリと階段のほとり、廊下の遠近に聞こえてきたのであった。