Classici giapponesi con furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Leggi 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) di 橘 外男 (たちばなそとお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 154.788 caratteri · 299 schermate
三
一同は言葉もなく、スケッチ板を眺め日記帳に眼を走らせている私の廻りを取り囲んで来たが、その時土人頭の老いたるビスカが静かにこんなことを囁いた。
「ハムラ、類人猿の森へ踏み込んで来ている以上まだまだ気をつけなければなりませんが、しかしもう昨日の類人猿だけはこの辺にはおりませぬ。もう六十哩も向うで木から木を伝わって、昨日の女の屍体を肩へかけて翔っている頃でさあ! 類人猿は木さえ伝われば足の早いものだ。一晩で六十哩くらい走ることは造作ありませんです!」
さて読者諸君、以上がこの不思議な日記帳をどうして、どこで、いつ私が手に入れたかということの、極めて大体なる荒筋であった。これから何が書かれてあるか、この血まみれの日記帳を開くわけなのであるが、その前に一言しておきたいことは、今まで述べたことは、決してこの一篇の前置きではなく、この日記を開く上に必要欠くべからざる報告の構成主要部分を勤めているということなのである。
三
五月六日。なんという情ないことであろう。広大なる邸に住んで多くの侍僕を使い、人は一代の碩学として称えてくれる。しかし父様のお心の中の苦悶は、私の物心ついてこの方いまだ一日として消えたこともないのだ。