Classici giapponesi con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 117.781 caratteri · 235 schermate
「さあ。」
と、大沢は、せまい空を仰いだが、二つ三つ淡い星が見えただけで、方角の見当は彼にもまるでつかなかった。
「とにかく、上流に向かっていることだけは、間違いないよ。」
彼は、のんきそうにそう言ってから、すぐ、どら声で校歌をうたい出した。すると山彦が方々からきこえ、急に賑やかになったようでもあり、かえって物すごいようにも感じられた。
「本田、歌えっ。次郎君も歌えよ。」
校歌の一節を一人で歌い終ると、彼はどなった。次郎は、しかし、歌う代りに、急に立ちどまって叫んだ。
「ああっ、見つかった、見つかった。……ほら。」
路は、その時、川から二三町ほど遠ざかっていたが、路と川との間には刈田がめずらしく段々になってひらけており、そのずっと向こうの、次郎が指ざした山の根には、小さな藁屋根が一つ、夕闇の中にぼんやりと見えていたのである。
「あれ、家かな。」
と、大沢も立ちどまって、じっとその方を見ていが、
「人の住む家にしちゃ小さいぞ。それに燈もついていない。」
「僕、行ってみましょうか。」
次郎はもう路をおりかけた。
「よせ、よせ。」
と、大沢は、いったんとめたが、
「そうだなあ、いよいよ家がこの近くに見つからなかったら、肥料小舎でも何でもいいから、そこに泊ることにしよう。