Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しのふちより

死の淵より

高見 順

Leggi 死の淵より (しのふちより) di 高見 順 (たかみじゅん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.084 caratteri · 38 schermate

Aozora Bunko

老いたヒトデ

あんなキレイな花を咲かせている

上手に化けたもんじゃないか

タヌキの言うことが幼いおれには分らなかった

今は分る

あのタヌキもやっぱりずいぶんさびしい気持だったのだ

今のおれにはそれが分るが

分ると告げたいタヌキが今はいない

すでにおれから失われてしまったタヌキは

もはやふたたびおれに戻ってはこないのだ

老いたヒトデ

踏みつぶすのも気持が悪い

海へ投げかえそうとおっしゃる

その慈悲深い侮蔑がたまらない

一時は海の星と謳われたあたしだ

ハマグリを食い荒す憎い奴と

あなた方から嫌われ

食用にもならぬとうとまれたあたしが

今は憎まれも怨まれもしない

あたしも福徳円満

性格も丸くなって

すっかりカドが取れ

星形の五本の腕もボロボロだ

だのにうっかりアミにひっかかった

しまったと思ったが

いや待て これでいいのだ

このほうがいいと思い直したところだ

年老いて

歯がかけて好きな貝も食えず

重油くさい海藻などしゃぶって

生き恥をさらしていた

炎天の砂浜で

のたうち廻る苦しみのなかで

往年の栄光を思い出しながら

あたしはあたしの瀕死を迎えたい

宝石のような星が

夜空に輝いていたのも昔のことだ

今は白い